窮すれば通ず
(日経eブック『江守徹の朗読で楽しむ易経入門』第3弾より)
江守朗読:
習坎(しゅうかん)は、孚(まこと)あり。維(こ)れ心亨(とお)る。行(ゆ)けば尚(たっと)ばるることあり。
彖(たん)に曰く、習坎(しゅうかん)は、重険(ちょうけん)なり。水は流れて盈(み)たず、険(けん)を行きてその信(まこと)を失わざるなり。維(こ)れ心亨(とお)るとは、すなわち剛中(ごうちゅう)なるをもってなり・・・・・・
(だんだん小さくなっていく・・・)
NA(ナレーション):
江守徹の朗読で楽しむ易経入門パート3
「習坎(坎為水)」、「沢水困」 ~窮すれば通ず。
朗読 江守徹 解説 竹村亞希子
NA:竹村亞希子さんは愛知県名古屋市生まれの易経研究家。
執筆活動のかたわら、全国各地でセミナーや講演活動を行っていらっしゃいます。
亞:
竹村亞希子です。
「窮すれば通ず」。
この言葉は東洋の古典の中で最も古い書物である、易経に書かれています。
「易は窮まれば変じ、変ずれば通じ、通ずれば久し」。
「窮まる」とは、道に行き詰まる、また、究極に達するという意味です。
ものごとは極まった瞬間に変化する。
変化が起これば、行き詰まることはなく、終わりなく、久しく通じていく。
すべてのもの事は究極に達すれば変化し、変化することによって新しい発展を遂げる。
その生々発展こそが久しく続く、永続性である。
これが、易経における「変化の法則」です。
易経は、東洋思想の原点とも言われ、
古くから帝王学の書としても読まれてきました。
それは私たちが生きていく中で出会うあらゆる変化の時を、
乾為天から始まる六十四種類の卦が教えてくれているからです。
この卦という言葉は、
「当たるも八卦、当たらぬも八卦」の“け”という文字を使いますが、
正しくは“か”と読みます。この「卦」とは、ひとつの物語とも言えます。
今回は易経六十四卦のなかから、
【坎為水】と【沢水困】という二つの卦をご紹介します。
共通項は水で、その苦しく困難な時を意味すると同時に、
困難な状況に陥った時の対処法をも教えてくれます。
【坎為水】は、またの名を【習坎】ともいい、
この名前の方がよく使われています。
「水に習え、水のように生きなさい」。
これが初めにご紹介する【習坎】の卦に書かれているヒントです。
NA(ナレーション):
それでは、先ず「習坎(坎為水)」の朗読をお聞き下さい。
江守朗読:
習(しゅう)坎(かん)―(坎為水(かんいすい))
習坎(しゅうかん)は、孚(まこと)あり。維(こ)れ心亨(とお)る・・・・・・
NA(ナレーション):
続いて「習坎」の概要説明です。
亞:
物ごとが行き過ぎると、その状態は無限には続かず、必ず穴に落ち込む。
度が過ぎた後(あと)には、落とし穴が待っていると易経には書かれています。
習坎の「坎」は「穴ぼこ、落とし穴」という意味で、
文字は土へんに欠乏の欠、土が欠けると書きます。
長い人生を生きてゆく中で、時には穴に落ちてしまうようなこともあります。
大きな穴に落ちたら、なかなか出ることができません。
這い上がろうとしても、途中でまた転げ落ちたり、滑り落ちたりします。
下手にもがいて、もっと深い穴に落ちることもあります。
この【習坎】という卦は、その苦労・困難を表す「坎」が
二つも重なっているため、一難去ってまた一難というような意味になります。
険難、困難、艱難辛苦が度重なって押し寄せるときなのです。
では私たちが本当に苦しい立場に立ったときや、
どうしようもないほどつらいとき、
人生に一度あるかないかの大変な困難な状況、
時には生きる気力さえも失ってしまうような苦しみの時は、
どのように対処すれば良いのでしょうか。
習坎は、苦しみに習うことを教える卦で、
「水に習え、水のように生きなさい」。
と、アドバイスを発しています。
続く
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