惜福の工夫と玄米食/食生活は運命を変える!?~【食は命なり】~ 水野南北(江戸中期の観相学の大家)

作成日:2014年9月22日

☆ 食生活は運命を変える!? ☆
 
【食は命なり】~ 水野南北(江戸中期の観相学の大家)
         (1760~1834)
江戸時代の偉大な人相見に
水野南北という人物がいる。
彼には『食は命なり』という
有名な言葉がある。
 
これは
「飲食により、人間の運命が変わる」
という意味である。
水野南北の経歴は、
それだけでも数奇な人生である。
若き日から大酒呑みで、
酒代ほしさに押し込み強盗をしでかし、
捕縛されたことが、人相見への第一歩となった。 
 
南北は牢屋の中で、
罪人たちの顔をまじまじと観察した。
その顔の特徴を把握して
娑婆に過ごす一般人の顔との違いを納得したのだ。 
 
そんな分類法で自らの顔を観察した南北は
ガックリとくる。
なんたる悪相、異相、醜い顔つきか! 
加えて罪人の特徴を全て備えていた。
 
獄を出た南北は人相見に尋ねる。
「俺の運勢や如何」
人相見は簡潔に回答する。
「あと一年の命なり」。
仰天した南北は尋ねた。
「どうしたらか助かるか」。
「坊主になれ」。
 
詳細は略す。
その後一年間、南北は麦と大豆だけで過ごす。
険難な相がなくなり、人相見は驚いた。
南北は人相の研究を始める。
風呂屋の三助をやって裸体を観察したり、
墓場の墓堀をして
死因がわかっている死体を観察した。
 
この後の南北は学究の徒と化していく。
神道や仏教から始まり、
儒教、史書、易まで網羅する。
南北の名である南と北は、火と水であり、
陰陽、すなわち「易」である。
 
そんなとき、断食をしていた彼に天啓が訪れる。
「そうだ、食だ!」。
断食のさなか、
自分が急激に変化する様が手に取るように分かる。
 
『食は命なり』、南北は喝破した。
 
閑話休題。
 
わたしは44年前から
毎年1回、一週間程度の断食を行うが、
それとは別に、週末断食とか1日断食も、
年に数回行っている。
 
1日だけ、水を2~3L飲む以外、何も食べない。
それだけで体が軽くなり、
頭が冴え(ホンマかいな?)
元気が体の中から湧いてくる。
 
もちろん、勘も研ぎ澄まされる。
というと、修行と間違えられそうなのだが、
わたしにとっては身体の大掃除であり、
暴飲暴食の「罪滅ぼし」であり、
はたまた「道楽」でもある。
 
長期にわたる断食は
専門家の管理の下に行わないと危険なため、
友人達にはもっぱら
週末あるいは1日断食をすすめている。
これなら素人でもさして危険はないからだ。
かくいう私もその昔は、
長期の断食だけは断食道場でやったものだ。
1週間の断食を自宅で行うようになったのは、
ここ25年くらいである。
 
そういえば20年ほど前に
インドで、当時64才の男性が
医療チームの監視の下で、
411日間の断食を行ったというニュースを聞いた。
(ホンマかいな?)
煮沸した水以外は口にせず、
その間、普通の生活を送り山登りも行ったという。
男性はその年の6月上旬に米国に招かれた。
「火星への有人飛行」の道を開く鍵が、
水と太陽の光だけで生き延びる断食にあるのでは、
という生態調査に寄与するためであった。
渡米以来、3か月を超える断食を
続けていたとあのころ聞いたが、
その後はどうなったんだろうか。
断食は人間の生存本能を呼び覚ます
一つの方法であろうか。
 
『食は命なり』の食は、
「正食」と「断食」で
表裏一体なのだと、わたしは考えている。
   ★   ☆   ★
(もう少し詳しく書いたもの)
     ☆ 食生活は運命を変える!? ☆
 
【食は命なり】~ 水野南北(江戸中期の観相学の大家)
         (1760~1834)
 江戸中期の 偉大な観相見に 
 「水野南北」という 人物がいました。
 彼は、
 『食は命なり』 という名言を残しています。
 「飲食により、人間の運命が変わる」
 という意味です。
 水野南北の経歴は それだけでも 数奇な人生です。
 両親を早く失い 
 子供の頃より 盗み 酒を覚え
 長ずるに 酒と博打と 喧嘩に明け暮れ
 18歳の時、酒代ほしさに 押し込み強盗をしでかし
 とうとう 牢屋に 入れられました。
 ところが これが 観相学への第一歩となったのです。
 
 南北は 牢屋の中で
 罪人たちの顔を まじまじと 観察して
 ある事実に 気付きます。
 それは 
 「人の顔には それぞれ相がある」
 ということでした。
 入牢している 罪人たちの顔と 
 娑婆に過ごす 一般人の顔とでは、
 その特徴に 著しい相違が ありました。
 この時点から 南北は
 観相学に 興味を持つ様に なります。
 出牢後、大道易者に
 「剣難の相がある。1年は生きられない
       死相が出ている」と告げられ
 その災いから逃れるため 禅寺へ行き、出家を願い出ます。
 住職に
 「1年間、米飯を口にせず、
  麦と大豆のみで過せたら入門を許す」と言われ、
 南北は 生命の危機の恐怖から
 好きな酒も ぷっつりと絶ち
 麦と豆を常食にし、川仲仕をして暮らします。
 1年後、易者と再会し
 「不思議だ!剣難の相が消えている!!
  何か大きな功徳を積まなかったか」と聞かれ
 別に 何もしなかったが
 食事を 麦と豆だけにしたことを言うと、
 「食を節することは 天地に陰徳を積むことであり
  それにより 知らず知らずに 天録が書き換えられ
  相まで変わったのだ」と教えられました。
 これが契機となり 観相学に興味を持ち、その道を志します。
 まず3年間、散髪屋の小僧になって 頭の相を研究。
 次の3年間、風呂屋の三助をして 裸体を観察。
 これで 生きている人間は 「よし、解った」と。
 さらに3年間、
 火葬場の隠亡(おんぼう・・・死体を処理する人)をして
 死者の骨相や 死因がわかっている死体を観察。
 これ以降も 研究を積み重ね 学究の徒と 化していく。
 神道や 仏教から始まり、儒教、史書、易まで網羅する。
 南北の名である 南と北は 火と水であり
 陰陽 すなわち「易」である。
 しかし そこまで研鑚を 積み重ねても
 従来の観相学では 百発百中とはいえず 悩んだ末に
 伊勢の五十鈴川で 断食水行50日の荒行を行い 
 断食のさなか 天啓が訪れる。
 『食は命なり!』~「人の命運は総て食にあり」
 南北は喝破した。
 美味大食を戒め「慎食延命法」を説くに至る。
 以後、観相にあたっては
 必ず詳細に その人の食生活を聞いて 占断を下し
 外れることが なかったという。
 また凶相の者でも 食生活を改善することにより
 運を変えることが 出来るとし
 『南北相法極意』を執筆、
 後『相法修身録』と改題し 刊行され 広く世に知られた。
           ●
 結論として
 水野南北の教えの要点は、
 いかなる良相・吉運・健康な人であっても
 常に美食をし、十二分に食事をしたならば
 悪相となり 凶運短命となる。
 如何なる悪相・凶運・病弱の人でも
 口にする物を節し 食事を腹八分目にする人は 
 良運となり 健康長命となる、という事です。
 ◆ エピソード ◆
 南北は 人相観に似合わぬ悪相であったため、
 地方などへ行った際
 偽物と間違われることが しばしばあった。
 そのため自分の人相書を 門人に画かせ、
 それに身体の特徴を記入して 持ち歩いていた。
           ●
  南北の「食を慎む」教えは、
 「独りを慎む」~『中庸』 に通ずるものです。
           ●
          参考資料
 
 ※ 水野南北 著「相法極意修身録」
 ※ 水野南北著・玉井禮一郎訳「食は運命を左右する」
       (「相法極意修身録」の現代語訳 )
 ※ 小説「だまってすわれば―観相師・水野南北一代」
         神坂次郎著
 
        ☆
   【惜福の工夫と玄米食】
父が玄米食運動家だった関係で
私の幼少時代に、わが家では
毎日のご飯が白米から玄米に変わりました。
体が弱く、すぐに風邪をひく体質だった私が、
半年で風邪をひかなくなりました。
結核で幾度か血を吐き、医者から匙を投げられていた父が完治しました。
高血圧だった母は、血圧が安定して元気になりました。
玄米食になってからのわが家は、病院と無縁になりました。
私も二木謙三先生や千島喜久男先生をはじめ、
多くの食養指導者の方とお会いし、知識も多少増えたおかげで、
その後も玄米食を続けています。
四十年以上前、ちょうど易経と出合った頃に、断食と出合いました。
それ以来、毎年恒例として一週間の断食を続けています。
しばらくは各地の断食道場でお世話になりましたが、
二十五年ほど前からは自宅で断食をしています。
私にとっての断食は修行でなく、
ふだんの暴飲暴食に対する罪滅ぼしであり、
陰を生じさせること、そして「惜福の工夫」なのです。
「惜福の工夫」とは、
易経を座右の書としていた幸田露伴が
『努力論』のなかで薦めているもので、
幸いをあとに残しておいたり、人に分け与えたりして、
わざと不足の部分を作り出すことです。
易経的な考えでは、いつもいつも得するほうを選択しないこと、
時に損をしてあえて満ち足りないようにすることです。
損とは譲るということでもありますが、これは見返りなく譲るということです。
これぞまさしく陰の力、陰徳なのです。
玄米食や自然食ももちろん、惜福の工夫になりますが、
断食は陰をより強く生じさせる方法でした。
それを気づかせてくれた本が、『断食療法の科学』(甲田光雄・春秋社)です。
断食は、健康管理としてだけでなく、
易経の理解を深めるのにも大変役に立ったと思っています。
        『超訳 易経』より
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