「ケネディ大統領暗殺を予言!?」
~少女時代の思い出「仙人」 (1983年名タイ寄稿)
仙人、と書いてきたが、名前はある。
本名は○○○○郎。
だが、名前を捨てて
我が家の食客でいた頃のニックネームは
「0(ゼロ)ちゃん」である。
痩身で弁髪、ヒゲを伸ばしていた顔つきは、
古い話で恐縮だが、
「イエスの箱舟」の千石イエスに似ていた。
当時のわたしには彼が高齢に見えたが、
いま、父達と一緒に映っている仙人の写真を眺めると、
今のわたしよりも年齢的には相当若い。
ある深夜のこと、突然
「近々、東か西のリーダーが死ぬ」
と仙人が予言したが、あまり気にとめなかった。
しかし、三ヵ月後にケネディが本当に暗殺されて、
わたしや家族、学校の友だち
(仙人は皆の人気者だった)もが慄然とした。
しかし、仙人にも怖いものがあった。
あるとき、仙人の奥さんから
「名古屋に行く」との電報が届いた。
すると、仙人は大事にしていた尺八と硯と、
細字1000字を書いた一粒の米粒だけ持って逐電した。
仙人といえども奥さんには頭が上がらなかったのか。
姿を消す術もきかなかったということだ。
その後、何回か葉書が届いたが、
消印の郵便局名はなぜか、いつも消えていた。
大好きな平野遼の水彩画『歩く人』
我が家の玄関にいてくれる~❤