剣道家である私の知人は、以前、
乾為天の龍の話はまさに武道論だといって、とても感激してくれたのですが、
積極的に攻めていく剣道家がほとんどのなかで、
たぐいまれな陰の力を発揮する剣道家がいることを話してくれました。
数少ない剣道の最高段位、八段を取得したその師範の戦いぶりは
「力に頼らず、勝とうとしないで負けない」もので、とくに見事だといいます。
七十代になるというその師範も、若い頃には前へ前へと
積極的に攻め入る戦い方をしていたそうですが、
あるときから試合中、ぴたっと動かなくなったそうです。
静かに空気が流れるなかで、相手が攻めてくると一瞬で勝負を決めてしまう。
その優雅でしなやかな動きは、ほれぼれするほど美しいというのです。
師範はいつも弟子に
「先に打つな、下がるな。相手がしかけてきた時に打て」
と指導しているそうです。
剣道をやったことのない私でも、
それがどんなに難しいことかは想像ができます。
「まさに陰の力ですね」と私も感服しました。
『超訳・易経』 第三章より
『超訳・易経 自分らしく生きるためのヒント』
増刷(3刷)感謝!
三省堂書店名古屋高島屋店の、新書・ビジネス書2部門において
平成24年5月27日、ベストセラー1位に。