2.変化の書・時の専門書

「易」という字は十二時虫と呼ばれる蜥蜴の意味といわれています。光の変化によって日に十二回、体の色を変えることから「易わる」、変化を意味します。『易経』は英語訳では『book of changes』、直訳すると「変化の書」です。つまり、「変化」について説かれた書物なのです。 では、変化するものとは何でしょう?それは「時」です。 『易経』は常に時、時、時と説く、時の専門書といえます。 書いてある内容をニュアンスをつかんでもらうために要約すると、「春が来て、夏が来て、その次に秋が来て、冬になる。そして冬の次には新たな春が来る」と書いてあります。 自然の変化に則した、この世の中の時の変化変遷の法則を説いているのです。 この変化の法則をわかりやすくあらわした「易の三義」というものがあります。

変化の定義「易の三義」

「易」には一字に、変易、不易、易簡(簡易)三つの意味があります。これを「易の三義」といいます。

「変易」とは・・・
森羅万象、すべてひと時たりとも変化しないものはない。
「不易」とは・・・
変化には必ず一定の不変の法則性がある。
「易簡」とは・・・
その変化の法則性を我々人間が理解さえすれば、天下の事象も知りやすく、分かりやすいものになる。

私たちは生々流転して、常に変化して止まない「時」の中で生きています。宇宙は刻々と変化して止まず、時はめぐり巡って、すべての物事は変化しつづけ、ひと時たりとも同じ時はありません。これが変易です。

しかし、変化の中には一定の不変の法則があります。一年は春夏秋冬、一日は朝昼夜と時がめぐり、春の次に一足飛びに秋が来たり、朝が急に夜になることはありません。 そして必ず、春夏秋冬は一年を、朝昼晩は一日を循環して、絶えずめぐっていきます。昼と夜、夏と冬が交互に入れ替わって、順序を違えることなく変化します。これを不易といいます。

易簡(簡易)は、容易い、分かり易いという意味です。小宇宙である私たちの人生の時も変易、不易にのっとって変化していきます。この変化の法則にならったならば、私たちが遭遇するあらゆる時も理解しやすく、スムースに運ぶというのです。

時間・空間・立場

ひとことに「時」といってきましたが、易経の「時」とは、「時・処・位」をいいます。

時間だけでなく、空間、場所、状況や立場・地位をも含んでいます。 人生という舞台の一場面と考えていただけるといいでしょう。苦しみの時、喜びの時、戦いの時、止まる時。人生にはさまざまな時があります。その場面においての時の意義、内容、勢い、変遷過程をあらわしているのです。

易経は自然の変化と、人生の時を照らし合わせて考察できるように、人生で遭遇するであろう、ありとあらゆる六十四種類の「時」を例にあげ、その変化過程を解き明かしています。