5.あらゆる時をしめす六十四卦

震下巽上 風雷益(ふうらいえき)

震下巽上 風雷益(ふうらいえき)

益、利有攸往。利渉大川。

彖曰、益損上益下民説无疆。自上下下、其道大光利有攸往中正有慶利渉大川、木道乃行益動自巽、日進无疆天施地生其益无方。凡益之道與時偕行

象曰、風雷、益。君子以見善則遷有過則改

益(えき)は往(ゆ)くところあるに利(よ)ろし。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よ)ろし。

彖(たん)に曰く、益(えき)は、上(かみ)を損(そん)して下(しも)を益(ま)す。民説(よろこ)ぶこと疆(かぎ)りなし。上(かみ)より下(しも) に下る、その道大(おお)いに光(あきら)かなり。往(ゆ)くところあるに利(よ)ろしとは、中正(ちゅうせい)にして慶びあるなり。大川(たいせん)を渉(わた)るに利(よ)ろしとは、木道(もくどう)すなわち行なわるるなり。益(えき)は動きて巽(したが)い、日に進むこと疆(かぎり)りなし。天は施し地は生じ、益すこと方(ほう)なし。およそ益(えき)の道は時と偕(とも)に行なわる。

象に曰く、風雷(ふうらい)は益(えき)なり。君子もって善を見ればすなわち遷(うつ)り、過(あやま)ちあればすなわち改(あらた)む。

初九、利用爲大作。元吉、无咎。

象曰、元吉无咎下不厚事也

六二、或益之十朋之龜弗克違永貞吉。王用享于帝。吉。

象曰、或益之、自外來也

六三益之用凶事。无咎。有孚中行。告公用圭。

象曰、益用凶事、固有之也

六四、中行告公從、利用爲依遷國。

象曰、告公從、以益志也

九五、有孚惠心。勿問元吉。有孚惠我、徳。

象曰、有孚惠心、勿問之矣惠我徳、大得志也

上九、莫益之、或之。立心勿恒凶。

象曰、莫益之、偏辭也。或之、自外來也

初九(しょきゅう)。もって大作(たいさく)を為(な)すに利(よ)ろし。元吉(げんきつ)なれば、咎なし。

象に曰く、元吉(げんきつ)なれば咎なしとは、下(しも)は事を厚くせざるなり。

六二(りくじ)。あるいはこれを益(ま)す。十朋(じつぽう)の亀も違(たご)う克(あた)わず。永貞(えいてい)なれば吉(きつ)なり。王もって帝(てい)に享(きょう)す。

象に曰く、あるいはこれを益(ま)すとは、外(そと)より来るなり。

六三(りくさん)。これを益(ま)すに凶事(きょうじ)をもってすれば、咎なし。孚(まこと)ありて中行(ちゅうこう)なれば、公(こう)に告ぐるに圭 (けい)を用う。

象に曰く、益(ま)すに凶事(きょうじ)をもってすとは、固くこれを有するなり。

六四(りくし)。中行(ちゅうこう)なれば公に告げて従わる。もって依(よ)ることを為し国を遷(うつ)すに利(よ)ろし。

象に曰く、公に告げて従わるとは、益(ま)さんとするの志あるをもってなり。

九五(きゅうご)。孚(まこと)ありて恵心(けいしん)あり。問うことなくして元吉(げんきつ)なり。孚(まこと)ありて我が徳を恵(けい)とす。

象に曰く、孚(まこと)ありて恵心(けいしん)ありとは、これを問うことなきなり。我が徳を恵(けい)とすとは、大いに志を得るなり。

上九(じょうきゅう)。これを益(ま)すことなし。あるいはこれを撃つ。心を立つること恒(つね)なし。凶なり。

象に曰く、これを益(ま)すことなしとは、偏辞(へんじ)なればなり。あるいはこれを撃つとは外(そと)より来(きた)るなり。

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