困、亨。貞、大人吉。无咎。有言不信。
彖曰、困、剛也。險以説困而不失其所亨其唯君子乎、貞大人吉以剛中也。有言不信、尚口乃也
象曰、澤无水、困。君子以致命遂志
困(こん)は、亨(とお)る。貞(ただ)し、大人(たいじん)は吉(きつ)にして咎なし。言うことあるも信ぜられず。
彖(たん)に曰く、困(こん)は剛(ごう)(手|(合/廾(おお)わるるなり。険(けん)にしてもって説ぶ。困(くる)しみてその亨(とお)るところを失わざるは、それ唯(た)だ君子のみか。貞(ただ)し、大人(たいじん)は吉(きつ)なりとは、剛(ごう)中なるをもってなり。言うことあるも信じぜられずとは、口を尚(たっと)べばすなわち窮(きゅう)するなり。象に曰く、沢に水なきは困(こん)なり。君子もって命(めい)を致し志を遂(と)ぐ。
初六、臀困于株木。入于幽谷三歳不覿。
入于幽谷、幽不明也
九二困于酒食朱(糸|(祓-示))方來。利用亨祀征凶。无咎。
困于酒食、中有慶也
六三、困于石。據于(艸/疾)藜。入于其宮、不見其妻。凶。
據于藜乘剛也。入于其宮不見其妻、不祥也
九四、來徐徐。困于金車、吝、有終。
來徐徐、志在下也。雖不當位有與也
九五、(鼻|刀)(肉|刀)。困于赤(糸|(祓-示))乃徐有説。利用祭祀。
志未得也。乃徐有説、以中直也。利用祭祀、受福也
上六、困于葛(苗/田|田)于(自/木|危)(兀|危)。曰動悔。有悔。征吉。
困于葛、未當也。動悔有悔、吉行也
初六(しょりく)。臀(しり)株木(しゅぼく)に困しむ。幽谷(ゆうこく)に入りて、三歳まで覿(み)ず。
象に曰く、幽谷(ゆうこく)に入るとは、幽(ゆう)にして明かならざるなり。
九二(きゅうじ)。酒食(しゅしょく)に困(くる)しむ。朱(糸|(祓-示(しゅふつ)まさに来たらんとす。もって亨祀(きょうし)するに利(よ)ろし。征けば凶なり。咎なし。
象に曰く、酒食(しゅしょく)に困(くる)しむとは中(ちゅう)にして慶びあるなり。
六三(りくさん)。石に困(くる)しみ、(艸/疾藜(しつり)に拠(よ)る。その宮に入りて、その妻を見ず。凶なり。
象に曰く、(艸/疾藜(しつり)に拠(よ)るとは、剛(ごう)に乗ればなり。その宮に入りて、その妻を見ずとは不祥(ふしょう)なるなり。
九四(きゅうし)。来(きた)ること徐徐(じょじょ)たり。金車(きんしゃ)に困(くる)しむ。吝なれども終わりあり。
象に曰く、来(きた)ること徐徐(じょじょ)たりとは、志下(しも)に在ればなり。位に当たらずといえども、与(くみ)するものあるなり。
九五(きゅうご)。(鼻|刀(はなき)られ(肉|刀(あし)れ、赤(糸|(祓-示(せきふつ)に困(くる)しむ。すなわち徐(おもむ)ろに説びあり。もって祭祀するに利(よ)ろし。
象に曰く、(鼻|刀(はなき)られ(肉|刀(あし)らるとは、志いまだ得ざるなり。すなわち徐(おもむ)ろに説びありとは、中直(ちゅうちょく)なるをもってなり。もって祭祀するに利(よ)ろしとは、福を受くるなり。
上六(じょうりく)。葛(苗/田|田(るい)に(自/木|危(兀|危(げっこつ)に困(くる)しむ。日(ここ)に動けば悔(くい)あり。悔(く)ゆることありて征けば吉(きつ)なり。
象に曰く、葛(苗/田|田(るい)に困(くる)しむとは、いまだ当たらざるなり。動けば悔(くい)あり、悔ゆることあれば吉(きつ)なりとは、行けばなり。
初六(しょりく)。その尾を濡(ぬ)らす吝なり。
象に曰く、その尾を濡(ぬ)らすとは、また極(きょく)を知らざるなり。
九二(きゅうじ)。その輪を曳(ひ)く。貞しくして吉(きつ)なり。
象に曰く、九二(きゅうじ)の貞しくして吉(きつ)なるは、中(ちゅう)をもって正(せい)を行えばなり。
六三(りくさん)。いまだ済(わた)らず。征(ゆ)くは凶なり。大川(たいせん)を渉るに利(よ)ろし。
象に曰く、いまだ済(わた)らず、征(ゆ)くは凶なりとは位(くらい)当たらざればなり。
九四(きゅうし)。貞(ただ)しければ吉(きつ)にして悔(くい)亡ぶ。震(うご)きてもって鬼方(きほう)を伐(う)つ。三年にして大国に賞(しょう) せらるることあり。
象に曰く、貞しければ、悔亡ぶとは、志行わるるなり。
六五(りくご)、貞しければ吉(きつ)にして悔いなし。君子の光あり。孚(まこと)ありて吉(きつ)なり。
象に曰く、君子の光ありとは、その輝き吉(きつ)なるなり。
上九(じょうきゅう)。飲酒に孚(まこと)あり。咎なし。その首(こうべ)を濡らす時は、孚(まこと)あれども是(ぜ)を失う。象に曰く、酒を飲みて首 (こうべ)を濡らすとは、また節するを知らざるなり。